年越しに 家族で歌う フォクソング[心] 他の家庭では，年越しに，父親の奏でるフォークギターの音色に合わせてフォークソングを歌う風習が無いことに驚く竹下タケゾウ(高校生)であった．

殺菌と 力を込めて 潰すパン[心] 潔癖症の藤田トシゾウ(32歳)は「殺菌」と言ってパンを潰して食べる．でもそれでイースト菌が死ぬことはないと思う．

クリスマス 思惑通りの 赤仏[心] クリスマスに向けて大仏に赤い頭巾とちゃんちゃんこを着せた珍念和尚．狙った通り本堂には若者のカップルが押し寄せた．寺に溢れた若者達を見ながらほくそ笑む珍捻和尚だ．

米騒動 買占め米屋の 白い飯[心] 米を求める民衆による暴動が起こっている危険な世の中．そんな暴動を恐れつつ米を買い占めた問屋が食べる米の白さ．

襖から 作った翼で 飛ぶ親父[心] 自力飛行が子供の頃からの夢だった親父(56歳)．親父は，この夢を叶えるためにいろいろな事を犠牲にし，失敗を繰り返してきた．しかし，ついに成功の時は訪れた．襖を繋げ合わせた翼で自力飛行に成功．背負った大きな翼を手で…

住職が 仏に着せた サンタ服[心] 12月24日は若者達の間ではクリスマスというキリスト教の行事が流行っているという話を聞きつけた珍捻和尚(85歳)．何でも赤い服を着たサンタクロースという人がプレゼントを配る25日の前夜祭だそうだ．そこで，珍捻和尚は若者…

スペイン人 なれど内気な ロドリゲス[心] 日本に住んで1年のホセ・ロドリゲスさんは内気なスペイン人．日本人は皆「スペイン人はみんな陽気だ」と思って接してくるが，内気な自分にがっかりする様子．スペイン人だからといって皆が陽気なわけじゃないことを…

幼少期 庭に埋めたる オタマ瓶[心] 定年を迎え，「これからは趣味に生きる」と宣言して庭に花壇を作り始めた父が，土の中から瓶を見つけた．今まですっかり忘れていたが，それは自分が小学生の頃，近くの田んぼで捕ったオタマジャクシを瓶一杯に詰めて蓋をし…

肉だけど 肉じゃなかった 高焼肉[心] 家では馬鹿にされ，会社では虐げられる毎日を送るサラリーマンのコウゾウ(56歳)．接待に欠員が出たということで，サラリーマンになって初めて連れて行ってもらったのは高級焼肉店．今まで経験したことのない歯茎に伝わる…

序二段が 内緒で結った 大銀杏[心] 通常は十両以上の力士しか結えない大銀杏を，トイレで一人こっそり結ってみた序二段の腰ノ海．鏡に映った自分を見て，ちょっとだけ強くなった気がした腰ノ海であった．

磯の香が 漂う背中 冬部長[心] 仕事中どこからともなく磯の香りが漂ってくる．どこからだろう．匂いの元を辿った先は部長の背中．磯の香り漂う冬の部長の背中に男の魅力．

登山家に 教えてあげたい ヘリコプター[心] 自力で苦労して山に登る登山家．「ヘリコプターって結構便利だよ」と教えてあげたい．

リストラの 父が居間にて 吹く縦笛[心] 父がリストラされて早一ヶ月．父はリストラされて以来，居間に体育座りで縦笛をひたすら吹き続けている．耳につくエーデルワイスのメロディー．

ドラフトで 指名が掛かった 木田主任[心] 社内でも実直な仕事ぶりで評判の木田主任(58歳)に，今年のドラフト会議で指名が掛かった．木田主任は野球経験がないのだが，「上手い，下手ではなく，真面目な野球」がモットーの監督に実直さが買われたかたちだ． …

四人目の サンボマスタ と友が呼ぶ[心] 同じクラスの友達から「お前って，四人目のサンボマスターだよな」と言われた近藤としぞう．誉めているのか，貶しているのか判断に困るとしぞうは，今年16歳だ．

ひったくり 奪った祖母の 知恵袋[心] 散歩に出かけたおばあちゃんがひったくりにあった．奪われたのは，知恵袋．金品はなかった．しかし，おばあちゃんにとって一番大切な知恵袋がなくなった．おばあちゃんの人生の知恵が詰まった大切な袋．犯人は，一日も早…

嘘一つ 仮面ライダに 仮面なし[心] 「考えてみれば，仮面ライダーって仮面を付けていない改造人間だったよなあ」 名月を愛でながら思う繁蔵76歳の秋．

ニカラグア 住めば都の ドン・ゴメス[心] メキシコの会社に勤めていたドン・ゴメスさん．突然ニカラグアへの転勤を命ぜられ，嫌々ながら行くことにした．しかし，思いの外住み心地が良く，永住を考え始めたニカラグア5年目の冬．

水を飲む 佐田の姿に 見える牛[心] 「好きな食べ物は何」と訊かれると，迷うことなく「水」と答える同級生の佐田君．豪快に水を飲む姿は，まるで牛のようだ．

母さんの 手作りデバイス USB[心] 母さんが夜なべしてデバイス作ってくれた．PC時代に便利だろうとろうとせっせと半田付け．ふるさとのUSBデバイス．いろりの香りがした．

釣り受け手 コンビニ娘よ さあ，ここへ[心] 会計の額は丁度出せるけど，わざと多くお金を出す．さあ，うら若きアルバイトのコンビニ娘よ，この差し出した手にお釣りを渡すがよい．手と手とを触れ合わせるがよい．

子らを見る カラスのクチバシ 狙いクチ[心] 都会のコンクリートジャングルに住むカラス達．公園で遊ぶ子供達に向ける眼差しは餌に向ける眼差しだ．子供達の肉を狙うクチバシの鋭さ．

ソチャンマの 音速超える 固拳（かたこぶし）[心] アフリカ奥地の少数民族ンバホ族の英雄ソチャンマ．伝説では，その拳のスピードは音速を超えていたという話だ．

長生きを 狙って動く 祖父の足[心] 長生き，長寿という言葉に敏感に反応する祖父の趣味は散歩．散歩のためなら，息子を犠牲にし，時には孫を犠牲にする．貪欲なまでに長生きへの飽くなき思いを胸に，散歩へ向かう祖父の足の頼もしさ．

金玉を ちぎって投げろ 青少年[心] 解釈不能．

忍者かな 服部課長の ダーツ投げ[心] 「いやー，服部だからって忍者じゃないよ」が口癖の服部課長と一緒にダーツをしたときのこと．「形が違うから投げにくいよね」といいつつも，投げたダーツが次々と真ん中に刺さっていく．そして，同席したケムマキ課長は…

夜な夜なと 味噌を練る趣味 兄の趣味[心] 兄の心の闇．

飼い犬と 同じ匂いの 和田部長[心] 何故，澤田部長を見ると撫でたくなるのだろう．以前から疑問だったのだが，飼い犬のジュリーと同じ匂いであることに気が付いた．厳格な性格で近寄りがたい存在だったが，思わぬ発見にぐっと身近に感じるようになった和田部…

忍者かな 服部課長の 身のこなし[心] 「いやー，服部だからって忍者じゃないよ」 が口癖の服部課長．しかし，落とした消しゴムを拾う動作，社員食堂での箸捌き，エレベータでボタンを押す動作，全ての動作が素早い．服部課長と同期のケムマキ課長の服部課長…

蟻地獄 落ちる我が身は だんご虫[心] 「うわっ」 と足を滑らせ蟻地獄の巣に落ちていくのはだんご虫．中で待ち構える蟻地獄もガッカリ．済まないという気持ちで転がり落ちて行くだんご虫．上から見ている蟻も半笑い気味．